アララット(Ararat)という、日本人には少しばかり妙な響きをもって受け入れられることの多いこの店名は、アララット山という実在の山の名前から戴きました。
このアララット山は、トルコとアルメニアの国境、カスピ海と黒海の間に横たわるコーカサス山脈のひとつとしてそびえ立ち、その標高はゆうに5千mを超えます。
旧約聖書はノアの方舟のくだりに、その名は登場します。
物語としてご存知の方も多いかと存じますが、その中で、ノアの方舟が漂着したとされているのが、島となって現れたこのアララット山の頂とされています。
氾濫していた水が引いた後、ノアはこの山の麓にぶどうの苗を植え、育て、ワインを造ります。
以降、信仰と共にこの旧世界に広がっていった、ぶどうとそれによって造られるワインの起源は、このアララット山にあるとされています。
神話的に語られてはいますが、現在ワイン用に栽培されている世
界中のぶどうの、その原生種のルーツを植物学的に辿っていくと、どうやらこの辺りに求められるということが今は明らかになっています。
様々な国々の、それぞれの歴史にも多く類例を見ることができる、こうした神話と実社会とに見る不思議な符合に、改めて感慨を覚えます。
国交等の関係もあり、日本ではなかなかなじみがないのですが、今尚ワインとブランデーの名産地として、このアララットという名は、世界ではつとに知られています。
ノアを私自身になぞらえるとは少々面映い心地ではありますが、この地にワインのお店を開くにあたり、ここから、この場所からワインというものが広がっていけば、という想いを、この名に託しました。
1999年のことです。