24/05/2020
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電子メールの誤送信
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電子メールの誤送信事故は、どの企業においても頭の痛い問題です。
誤送信によって重要な営業秘密や個人情報が漏洩したりしたら、企業の事業継続にも影響する重大な事態となります。
そのため、ISO27001では、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に「電子メール利用規程」のようなルールの作成とその運用を推奨しています。
「従業者は、業務上やむを得ず機密情報や個人情報を送信する場合は、送信先のメールアドレスに間違いがないか、予め確認の上送信する。万一、誤送信した場合は・・・」
のようなルールが皆さんの会社のマニュアルにも記載されているのではないでしょうか。
しかし、このようなルールがあれば誤送信しないのかといえば、そう上手くはいかないですよね。
何故なら、ほとんどのメール誤送信の原因は、うっかりミス等のヒューマンエラーによるものだからです。
どんなに注意深い人も完璧ではありませんから、ある程度の確率でヒューマンエラーは発生します。
ISOでは、“人間は必ずミスをする!” という前提でルールを作ることを要求していますので、上記のように“メールを送る本人が注意して頑張れ!” みたいな決め事だけでは有効なルールとは言えません。
メール誤送信事故が止まらない企業も当然このことに気付き、じゃあ“ITの力を借りて誤送信を防止しよう”となります。
例えば、
・メーラーの誤送信防止機能の利用
・メールアドレスの記載補助機能の停止
のような対策です。
誤送信防止機能には、例えば、メール送信ボタンを押した後数分間メールを手元に留め置いてくれる一時保留機能のようなものがあります。
送信者がミスに気付く時間をかせぐことができるため、送信アクションをした直後に誤送信に気付けば送信自体をキャンセルすることができます。
一方、メールアドレスの記載補助機能はオートコンプリート機能なんて言われています。
送信先のメールアドレスを入力する際に、送信する相手が過去に通信した人であれば、リストからそのメールアドレスを途中から自動的に入力補助してくれるとても便利な機能ですが、同性の人が多い日本社会では、この機能が故に同性の別人に誤送信する事故が絶えません。
これらの対策は、残念ながら誤送信防止の決定打とはなりません。
自らが行ったメール送信動作が誤っていないと思い込んでいる人は、これらのシステムが働こうが働かまいが、自分のミスに気付かずにメールを送信してしまうからです。
そして、これでもダメなら、“上司の承認がなければ社外にメール送信できなくしてしまおう!”
というように、今度は少しお金をかけて送信メールのダブルチェック機能を設けることになります。
只、私の経験上、最後の砦であるはずの上司も誤送信を見逃すケースは多く、これも実はあまり有効な対策とはいえません。
いかがでしょうか?
皆さんの会社にも似たようなルールがあるのではないでしょうか。
お分かりのように、これらの対処療法的な誤送信対策をやればやるほど、メール送信に手間がかかり業務の生産性は低下しますよね。
したがって、仕事が忙しい時ほどこれらのルールは蔑ろにされ、これがまた誤送信事故の発生原因となってしまうのです。
悪循環ですね・・・
そもそも、「誤送信」とは何なのでしょうか。
メールを送る相手を間違えること・・・
メールに添付するファイルを間違えること・・・
送るべきでないタイミングに送信すること・・・
メール本文に記載した内容が誤っていること・・・
これらは全て「誤送信」なのでしょうか?
メール誤送信事故を防止するためには、まず「誤送信」を定義しておくことが重要です。
もし「誤送信」の定義が曖昧であると、いざ誤送信が起きても、
“いやいや、誤送信したメールには重要な情報が含まれていなかったからこれは事故じゃないんだ。”
“誤送信で漏洩したのは当社の情報のみで顧客の情報はなかったから大丈夫なんだ。”
“誤って送った相手は社内の人だからいいんじゃない。”
“送信した相手は気にしていないから誤送信には該当しない。”
といった現場の勝手な判断により事故が隠蔽され、改善の機会を逸することにもなりかねません。
また、実は「誤送信」の定義は組織によって異なるものなのです。
日本人の場合、どうしても事を大袈裟にしたくないという傾向が強いように思いますので、どのようなケースが誤送信に該当するのか、その定義は必ず文書化しておきたいところです。
さて、自社にとっての「誤送信」を定義できたとして、ではどのようにアプローチすればメールの誤送信は減るのでしょうか。
ISO27001では、具体的な対策を考える前に、メール誤送信のリスクをアセスメント(分析・評価)します。
メール誤送信にはどのような脅威(リスクとほぼ同意)があり、自社にはこの脅威に漬け込むかもしれないどのような脆弱性(弱さ)があるのかアセスメントを実施します。
このアセスメントの結果を受けてリスクを減らすための具体的なルールを作って実施するのです。
ちょっと難しかったでしょうか・・・
では、メール誤送信事故の発生原因とはどのようなものなのでしょうか。
事故を起こした会社にうかがうと、事故の原因について当事者はたいていこう言います。
“残業続きで寝不足で・・・うっかりしていた”
“いつもの相手だったのでよく確認しないで送信してしまった”
“送信する相手があの鈴木さんだと思い込んでいた”
しかし、これらは事実であって、事故の原因ではありません。
ISO27001では、メール誤送信事故のような「不適合」に対して、その事故発生の原因について深く分析し、発見した根本的原因を改善することによって再発を防止することが要求されています。
メール誤送信事故の根本的な発生原因は、
“誤送信事故を起こした従業者やその所属組織が、電子メールを安全に利用できる環境に置かれていなかったこと”
多くの場合、これこそが事故の根源です。
ですから、
・メール誤送信の先にどのような悪いこと(情報漏洩による被害等)が起こるのかしっかり認知させる。
・送信者がミスしにくいメール送信手順を考えてマニュアルにする。
・どのような時にメール誤送信ミスが発生しやすいのか、送信手順の確認訓練等を通じて体感させる。
・誤送信していないか抜き打ちで送信メールのログをチェックする。
のような再発防止策を実施する必要があるのです。
しかし、最も有効な究極の対策は、“電子メールを送らないこと” かもしれません。
メールを送信しなければミスも100%防止できます。
電子メールはそもそもコミュニケーションツールなのですから、メールソフトを使用したコミュニケーションを行わなければよいのです。
つまり、コミュニケーションの相手を誤る可能性の少ない、よりセキュアなコミュニケーションツールを使用するわけです。
プロジェクトメンバー間のコミュニケーションであれば、プロジェクト専用サーバを介して情報を交換する。
法人IDによりアカウント管理されたSNSのチャット機能を利用する 等々。
他にも様々な代替手段がありますね。
どのような内容(情報の機密レベルや重要度など)のコミュニケーションなのか
コミュニケーションの実施時期はいつでその頻度はどれくらいか
情報交換を行う当事者は誰と誰か
必要なレベルの具体的手順はどのようなものか(ファイル交換が必要か等)
求められるコミュニケーションの品質に応じて、これら複数のツールを組み合わせて情報を交換するのもよいと思います。
自分たちに求められるメールセキュリティについて、この機会に一度考えてみてはいかがでしょうか。