01/06/2026
ヴァルマッジョーレ
「なぜ巨匠は、バローロではなく、この砂の斜面を選んだのだろう?」
――Langhe (ランゲ)の王達を知り尽くしたあのブルーノ・ジャコーザが、
なぜ、タナロ川の向こう側を見つめていたのか。
ボトルを目の前にして、そんな贅沢な疑問が頭をよぎる。
しかもそこは、
重厚な泥灰土でもなければ、
威厳をまとった峻烈な丘陵でもない。
風が吹き抜け、
柔らかな砂が崩れ、
夕暮れには光までがほどけてゆくような場所。
Valmaggiore(ヴァルマッジョーレ)。
その名は確かに、ラベルの特等席に刻まれている。
だが与えられた格付けは、
どこまでも曖昧な Nebbiolo d’Alba (ネッビオーロ・ダルバ)のまま。
まるで、世界からあえて定義されることを拒んでいるかのように見える。
本来なら、
彼がこんなワインを造る必要などなかったのではないか。
Barolo (バローロ)がある。
Barbaresco (バルバレスコ)がある。
歴史も、名声も、彼自身の手で完成させた最高峰の階級があるのだから。
それでもなお、彼はこの砂の斜面に惹かれた。
そこに一体、何を見ていたのだろう。
ボトルを前に、私は想像を巡らせる。
そこにはきっと、巨大な城郭のような構造はない。
香りは天高く漂い、
輪郭は風のように軽やかで、
味わいは触れた瞬間に、あわく遠ざかるのではないか。
なのに、なぜか記憶だけが鮮烈に残り続けるような、そんな予感がする。
その佇まいは、
ピエモンテの「厳格なネッビオーロ」というよりも、
ただ一つの区画の個性にすべてを捧げる、ブルゴーニュのクリュの思想に近いのかもしれない。
土地の格式ではなく、
その場所にしか宿らない“気配”そのものを追い求める狂気。
だから Valmaggiore には、
どれほど理詰めで語っても説明しきれない熱があるように思えてならない。
理論ではない。
戦略で�