●醤油屋の宝といえる蔵をなによりも大切にする
蔵の中を見渡すと、カビのようなものがたくさん付いています。この中で食べ物を作るのは不衛生だと思う方もいるでしょう。しかし、これが本来の醸造場の姿なのです。この微生物がお醤油をつくるのです。桑田醤油では、速醸法(醸造を人工的に早める方法)ではなく、四季を感じながら1年半以上、ゆっくり、じっくり諸味を発酵・熟成させていきます。だからこそ、有効微生物が住み込んでいるこの蔵の板や壁や杉樽1つ1つが宝なのです。1平方センチの中に約1億数千万の微生物がいるといわれています。今の味があるのは長年受け継がれてきたこの蔵の有効微生物のおかげなのです。古くなったら壊す、なんてことは簡単ですが、昔ながらの醸造法で同じような味を造るには、その蔵が歩んできたのと同じだけの莫大な年月が必要となってくるのです。この時間が醸造にとって最も大切な要素であり、原料、製法以上
のウエイトを占めていると言ってもけっして大げさなことではないのです
●自然の力を信じ、時間と手間をおしまない
醤油の基本は、一に麹、二に櫂入れ、三に火入れ。その中でも一の麹の部分が非常に大事で、これの良し悪しが最終的な「味、香り」に大きく左右し、途中での修正は殆ど絶望的です。ここからは人間が手を出す部分は極僅かで、微生物の営みに任せるしかありません。時々櫂を入れてやるぐらいで、諸味が暑くても、寒くても何もできないのです。 大手の醤油屋さんは空調設備がありますが、ここにはそんなものありません。 何の機械設備のない開放の杉樽での自然発酵。ほとんど微生物に育ててもらっているようなものです。実は、この方法がうまい醤油をつくる一番の方法だと確信しています。冬に仕込み、夏に近づくにつれ発酵は活発になり、秋に風味がでてきます。冬には諸味温度は2度まで下がりじっとしているようですが、耳を澄ますと「プチプチ」と諸味の息遣いが聞こえてきます。一日一日旨みが増していくのを感じられます。諸味の出来を確認して圧搾が出来るまでに1年半以上、本当に気の長いしごとなのです
●原材料の仕入れから、出荷までおこなってこそ真の蔵元
弊社の醸造法は、大量生産に向かないだけでなく、たくさんの時間・手間のかかる製法です。それが原因で近年、昔ながらの醸造法を採用し、材料の仕入れから製品の出荷までを一貫して行っている醤油屋は現在全国で150軒程度(全体の約1割)に減ってしまいました(※注1)。このことは醤油造りをする私たちにとって大変残念なことです。だからこそ桑田醤油は真の蔵元として、これからも醤油づくりに時間と手間をかけていきます。大量生産では決して出すことの出来ない本物の味・香り・旨みを皆様にお届けしていきたいと考えております。※注1最近では生醤油を大手や組合等から仕入れ、製品を製造する醤油屋が主流になりました。そして昔ながらの醸造法を採用し、杉樽で仕込んでいる醸造場は当店のような小さな蔵元がほとんどです。長期熟成で杉樽仕込みという醤油の出荷量は、醤油全体の中で数%となっております。また国産丸大豆、 国産小麦、杉樽仕込みとまでなると、醤油全体の1%以下(0.6%程度)となっております。