25/04/2026
小林聡美の顔は、なんだかのほほんとしている。そしてご本人の演じる役や書かれているエッセイはあっけらかんとしているのである。ヘルシンキでおにぎりのレストランを開いたり、長野の山奥でペンションをやっていたり、沖縄に一人旅したり…。のほほんと登場してあっけらかんとしている芝居が多いのである。
そこに今回観劇した「岸辺のアルバム」である。原作はいうまでもなく山田太一が書き一世を風靡したテレビドラマである。あの清純な八千草薫が竹脇無我と浮気をするというのが話題になった。昭和のモーレツ社員の夫に満たされず浮気をするものの、もう終わったことなのと、夫婦の関係を続けることを望むというストーリーだ。
そして小林聡美なのだが、彼女の人に合わないというか、理解のない夫には物申すだろうし、ウジウジした浮気相手だったらひっぱたいて帰ってきそうである。ところが、小林は昭和の主婦を演じていた。夫に原因を求めず「私がいけなかったの、でももう終わったことなの」と、あくまで自分が悪いのだと…。今までの彼女の芝居とは全然違うものを見せてもらった。
出演者全員いい芝居をしていたのだが、息子役の細田佳央太が出色の出来だった。先生役の前原洸がとてもいい味を出していた。
流されそうな家から「家族のアルバム」を持ち出すという夫に「あなたにとっては作り物の家族写真の方が大切なの」と言っていた則子だが、いよいよ流される家を目の前に「アルバムとってきたいんです。家族の記録なんです。かけがえがないんです」と家族でみんなで家の飛び込んで、それぞれが家にサヨナラと叫ぶ。涙が抑えられなかった。
そしてカーテンコールの小林聡美、のほほんと登場してきた。「あ、小林聡美だ」と思った。